首藤 一幸
2026年 9月 22日(火・祝)
ずいぶんと長い間、IPA 未踏事業のプロジェクトマネージャ (PM) を務めています。 2009年度から未踏ITのPM、2023年度からは未踏アドバンストのPMです。 「客観的には、いい加減に替えろよ、と思うけれど、主観的には、いつまでもやらせて頂きたい」と、たまに冗談のように言います。 いい貢献ができるよう努めていますし、できているのではないかという自負もなんとか保っています。
未踏事業の採択プロジェクトがよく出る大学や研究室というものはあります。 初期では、登大遊さんをはじめ筑波大学、その後、未踏ITと相性のいいHCI分野のお茶大椎尾研、東大暦本研などからの採択者が多かった印象です。 それが、2020年頃だったでしょうか、東大ばかりになったなと感じました。 2020年度 未踏ITを振り返ると、採択20プロジェクト中5.5プロジェクトが東大でした (0.5は2人組のうちの1人が東大)。 1/4以上が東大でした。
2026年8月20日(木) 京都未踏 ブースト会議での首藤のスライド:東大ばかり
東大に在籍する学生は賢いのだから当然でしょう、という感想もあるかもしれませんが、同様に賢いはずの京大在籍者の採択はゼロでした。 東大からの応募者もたくさん落ちてますよ、という反論も聞きましたが、そうだとしても、東大からの応募がそれだけ多いということです。 応募が多いにせよ採択率が高いにせよ、どちらにしてもかなりの偏りが見られます。
その頃、私の中では、「東大ばかり」に加えてもう1つ、京都未踏を立ち上げるに至った理由が持ち上がっていました。 未踏PMを務めてきた10数年間、未踏の仕事と大学教員としての仕事は完全に切り分けて、自分の近くにいる学生と未踏は結びつけずに来ました。 切り分けは当然のこととはいえ、東工大・京大の学生に未踏的な機会を提供する余地はあったかもしれません。 そして今、未踏は「東大ばかり」となっています。 自分の足元をもっと掘り返すことは自分の責務であるようにも感じます。
未踏事業の採択者が、顔合わせにて、別プロジェクトなのに「ひさしぶり!」とすでに顔見知りであるシーンを見ました。 理由の1つは、IPAが実施しているセキュリティ・キャンプ(セキュキャン)です。 セキュキャンで同じ釜の飯を食ったどうしが未踏で再会したわけです。 もう1つよく見たのが、本郷テックガレージで知り合ったどうしです。
2024年9月21日(土)、旧友 石原直樹さんからお声がけ頂いて、Google Developer Group 関西/京都のイベントに参加しました (日記2024年9/21分)。 そこでお会いした松下旦さん (未踏アドバンストOB) に、本郷テックガレージを通ってきた人達がじゃんじゃん未踏に採択されているという話をしました。 すると、本郷テックガレージを運営している方が京大でテックガレージをやることに興味をお持ちだと教えてくださいました。
未踏アドバンストPMとして、うまく行っているように見える本郷テックガレージを知って、そして、見習って京大で何ができるかを考えたい。 2024年10月6日(日)、曾川さん (未踏IT PM, 京大院卒) と一緒に本郷テックガレージを訪ねました (日記2024年10/6分)。 本郷テックガレージ ディレクター 松井さんが詳しくお話を聞かせてくださいました。 本郷テックガレージの側でも未踏事業は意識していて、採択実績の把握もしていました。 そして、京大で一緒にやりましょう!ということになりました。
2025年度から本郷テックガレージ ディレクターを継ぐこととなる池内さんにも準備に加わって頂き、京大生のヒアリング (日記2024年11/19分)、スポンサー提案資料の作成 (日記2024年12/18分) などなど、準備を進めました。
しかし、いつの間にか前進は止まっていました。 2025年9月9日(火)、意を決して、松井さんと池内さんに、京都のテックガレージに割けるお時間をチャットで尋ねたところ、ほぼゼロという回答を頂きました。 無理もありません。
また、テックガレージの実施にはまた別の課題がありました。 部屋です。 ディープテックのプロジェクトを支援するので、レーザーカッターや3Dプリンタといった機材や作業場所を提供することが必要です。 機材は京都大学の施設を使わせてもらうという手もあるのですが、開発中の物品を置いておけるかというと怪しいです。 本郷テックガレージは(もちろん成果が出ていることもあって)例外的に資金リッチですが、普通はそうはいきません。 京大の近くに部屋を用意できないか?それなりに調べました。 百万遍交差点に面したいい感じの建物 (京大上日光ビル) の1フロアは家賃+管理費が100万円/月で、年1,200万円以上かかることがわかりました。 京都のIT系学生コミュニティCAMPHOR-が借りていた古民家CAMPHOR- HOUSEは家賃5万円/月という激安でしたが、そうした物件とそうそう出会えるわけではありません。 京都大学の中では11~12月に全学共用スペースの使用者募集がかかるのですが、工作機械や作業スペースに足るような広さの部屋は出ません。 また、当然ながらそうした部屋は京大の立場でしか借りられませんが、一方、京大という法人で経産省AKATSUKI補助事業を実施することはほぼ不可能です (これについてはまた別の記事で)。
1人になりました。 やるとしたら首藤1人でやらねばなりません。 ここでやめてしまう手もあります。 ただ、GMOさんは「やりましょう」と言ってくださっています。 この機会を捨ててしまうのは惜しい。 お二人が動けないのなら、やるのはテックガレージである必要はありません。 何をやるか? 得体の知れない新プログラムを始めても誰もついて来ないでしょうから、「未踏」を名乗ることは必須であるように思われます。 未踏のやり方は好きですし、未踏なら専用の部屋は要りません。 しかし「未踏」は勝手には名乗れません。 道義的に、どう考えてもIPAの承認が要りますし、IPA (国) が培ってきたブランドを他者が使うというのは非常にハードルが高いことです。 実際、IPAは「未踏」を商標登録しています。
そこで経産省AKATSUKIを思い出しました。 東京近郊ではない地域で未踏にならって人材発掘・育成をしようという補助事業者を支援する枠組みです。 運営が大変、と聞いていたので、腰は引けます。 しかし、「未踏」を名乗るにはこれしか手がなさそうです。 正確に言うと、「未踏」はIPAの登録商標なので名乗れないのですが、「福岡未踏(略称)」という表記もされていることですし、プログラム名称の中に「未踏」の2文字を入れられればそれで充分です。 2025年9月12日(金)、かくして、やるか!と決心しました。